「ケニアの憲法改正」危険と疑問。出たっきり邦人@ケニア第6回

海外で子育て(by母)

このエッセイは3人の子供を連れてケニアに住んでいた母が、2005年10月に書いたものです。

「出たっきり邦人・中南米・アフリカ編」というメルマガで配信していた内容を、一部編集して紹介しています。


〓ケニア共和国・ナイロビ発〓

ケニアよもやま話 第6回 「憲法改正」

11月21日に憲法改正の国民投票があります。
街の治安もますます悪くなることが予想されており、あまり出歩かないようにといわれています。
街の至る所に投票所があって、そこで反対派と賛成派が衝突する可能性があるからですが、子供たちの学校の送迎はどうしよう?
前後1週間くらいは危ないといわれているから、1週間も休ませるわけには行かないしなぁ、覚悟を決めて送迎するか。投石、流れ弾に注意しなくちゃね。

私にとっては、憲法改正の中身よりも、街の治安のほうが心配。
現に地方では反対派と賛成派が衝突して、死者が出たりしているし…。

まあそうはいっても、自分の勉強がてら今回の憲法改正の概要をまとめてみます。
まず、現在の憲法は独立時、1963年に出来たもの。
その後、30回以上にわたり議会が修正を行い、大統領の権限を強化してきました。
その際には国民投票はされておりませんが、今回は独立後初めての大改正ということで、議会での修正案は可決されておりますが、来月の国民投票で投票数の過半数の賛成票を得れば可決、(ただし、一応異議申し立ての手続きあり。申し立て人は500万シルの保証金を裁判所に支払う。)憲法改正決定となります。

内容に関しては、修正箇所も多いことからまとめることは困難ですが、すべてがよい方向に変わるようになっているわけではないようで…。

そもそも、憲法案自体、議論の一部となっているようで、もともとは2004年3月に全国憲法会議で採択されたボーマス草案というものがあり、この会議にはすべてのステークホールダーが参加したとされ、国民主導の草案と捉えられています。
しかし、その後ボーマス草案が議会で修正されたものが新憲法案であり、これは議会が憲法見直しプロセスを「ハイジャック」したものと言われています。
現在国民投票の対象となる新憲法案がそもそも、議会が好きなように変更したものだ、という反発もあるようです。

主要論点ではないだろうものの、私の目を引いた新聞記事としては、まだまだ男尊女卑思考の強く残るこのケニアでは、部族によっては土地の所有を女性が出来ない部族もあります。
今回の憲法改正の1つに「因習により土地の所有を制限してはならない。」という条項があり、そうすると女性が土地を所有することが可能になってしまいます。それに反発が強い部族もあるのだとか。

そして、最近よく新聞に出ているのが、『国立公園』が『保護区』に格下げされているケース。
かの有名な、キリマンジャロを拝みながら野生動物が見られる『アンボセリ国立公園』も、つい数日前に『アンボセリ野生動物保護区』に格下げになりました。
なんと、これもこの憲法改正に関係があるのですって。
と、いうのは政府・議会は憲法改正への賛成票が欲しい。
そして、アンボセリ国立公園を保護区に格下げし、土地の主導権を地元政府に渡すことにより、その周辺の主要部族であるマサイ族の賛成票を取り付けようとしているのだとか。

もちろんこれには野生動物保護団体は大反対しています。
そもそもこの格下げ決定はきちんとした手続きを経ずに、政府が賛成票欲しさに強引にしてしまったものだとか…。
一応、この件についてはこの野生動物保護団体が訴訟手続きには入っていますが、もう既に地元政府に渡されており、密猟が増えたり、インフラ設備の劣化、多様な生態が維持できなくなる可能性も指示されております。

そして、こうなると必ず出てくる世論がありまして、「外国人は引っ込んでろ!」だったりします。
「ケニアのことはケニア人が決める。手続きを踏んでようがなかろうが、ケニア人が決めたんだから、えらそうな顔をして文句を言うな!」という意見も主要新聞にちゃんと載ったりしておりまして、すぐに、もう植民地じゃないんだから外国人は黙ってろ、ということになります。

そこに「日本はもうこれ以上金は出せないといっている(Japan rules out new cash for project)」なんていう見出しがあったから読んでみると、日本はなんとケニアの水力発電のために330億円も援助していて、今回その一部、そして最後の援助である114億円の援助を行うにあたり、これがこのプロジェクトにたいする最後の支払いだという事実が、このような記事の題名になって現れてきたりします。

そうじゃなくってさぁ、どうしてお金を出してもらうことが当然のような顔をして文句ばっかり言うのかなぁ?なのに、外国人が国立公園の心配をすると「うるさい、だまってろ」なわけ?なんだか、腹が立ってくるのは私だけではないはず。

また、話は憲法改正に戻りますが、今回賛成派はバナナ、反対派はオレンジというシンボルを掲げております。ケニア国民の識字率は2003年の調べで15歳以上85%となっております。
多分投票用紙には、字の読めない人のためにバナナとオレンジの絵が描いてあるのでしょう。
バナナが庶民的な食べ物で、オレンジは庶民の手には届かないとても高級なものであることから、何となく政府の意図を感じる人もいるようですが、今のところ反対派が優勢だという話もあります。

昨日、今日とケニアの主要大学の1つであるケニアッタ大学の学生達が、道路を往来している車両に投石活動を行っているというニュースもありました。
行動声明も何も出ませんので、推測するしかないのですが、多分この憲法改正に関しての投石でしょう。
投石にあったことのある邦人が言っておりましたが、結構大きい石を使うし、かなり危ないとの事。
ガラスはもちろん割れます。
もしも3人の子供が乗っているときにそんなことにあったら、子供たちにとってはトラウマになりかねないし、私にあなた達の行動を子供たちにどう説明しろと?

なんで、まったく関係のない人々に危害を与えることが何かの意思表明になるのかが、私には理解できませんが、この国ではよく取られる行動様式の1つです。
数ヶ月前にはナイロビ大学の寮が長く停電になったから、と言って、寮生達が道に繰り出し投石活動を行いました。私が呆れたのは言うまでもありません。

縁があって人生の数年間を暮らすことになったこの国を前向きにとらえようとはしております。
今、ジャカランダの花が満開になってとてもきれいですし、気候も多分世界で一番ではないかというくらい年中快適です。
うちのお手伝いさんも、とても誠実で明るい人ですし、彼女の家族には幸せになって欲しいと思っております。

国民投票にかこつけて、危害行動、暴動に紛れての強盗などの行動に出る人のなるべく少ないことを望みます。そんなことでは、何の解決にもなりません。
嫌なら皆で反対票を投じればいいのです。でも、庶民の中にも賛成派が多いのも彼らのストレスの原因なのでしょう。

国民投票まであと一ヶ月になりました。

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